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腎不全を合併する骨粗鬆症の治療法

骨粗鬆症リスクは高齢者で高く、加齢とともに腎機能すなわち糸球体濾過率(glomerular filtration rate : GFR)も低下するため1)、 骨粗鬆症患者は同時に腎不全を合併することが多い。高齢女性では体筋肉量が少なく、血清クレアチニン値(s-Cr)が軽度上昇しているだけでも予想外に腎 機能は低下している。そのため腎機能をより正確に評価するため、クレアチニン・クリアランス(CCr)を実測するか、もしくはGFR推算式2)を用いる。

日本人用eGFR(mL/min/1.73㎡)=194×Cr-1.094×Age-0.287(女性は×0.739)
一般的な骨粗鬆症のリスクは、高齢、閉経後、低栄養、減荷重(運動不足)、薬剤(副腎皮質ステロイドホルモン剤など)、Ca摂取不足などである。さらに 腎不全患者は、代謝性アシドーシス、Ca・P代謝異常やiPTH上昇による高回転骨、さらにはGFR低下と骨量低下とには相関があるなど、骨塩量減少のリ スクを合わせ持つ。骨粗鬆症や骨塩量減少は、透析患者においては異所性(血管)石灰化から動脈硬化を促し心血管系疾患へと導く生命予後悪化の因子となり、 単に骨合併症に留まらない。
骨粗鬆症治療は、適度な運動、禁煙、十分なCa摂取など生活指導に加え、薬物療法を行う。骨折抑制効果において明確なエビデンスが認められているのは、 ビスフォスフォネート製剤と閉経後女性に対する選択的エストロゲン受容体作動薬(selective estrogen receptor modulator : SERM)である。
ビスフォスフォネート製剤は、破骨細胞をアポトーシスに誘導し骨形成と骨吸収バランスを骨形成 側に強力に傾ける、骨粗鬆症治療の第一選択薬である。骨折頻度低下のみならず死亡率の抑制においてもエビデンスがある。

 

しかし、この薬剤は腎排泄性であ り、保存期や末期(透析期)腎不全患者では半減期が延長し体内蓄積すること、また、静注投与された腎不全患者においてネフローゼ症候群を呈する巣状糸球体 硬化症や急性尿細管壊死による急性腎障害発症の報告がある3)。一方、透析患者に本薬剤を投与し骨 密度維持、異所性(血管)石灰化が抑制でき、かつ重大な副作用の発現もなかったとする報告は多数ある。

 

腎不全患者においては、投与量を減量し投与間隔を延 長する必要があるが、腎機能に応じた使用法は現時点では明白でない。ゾレドロン酸は骨粗鬆症に対しては本邦未承認であるが、大腿骨頸部骨折(low- trauma fracture)後90日以内の年1回投与により新たな骨折と生存率を改善した(HORIZON再発性骨折トライアル、Lyles, KW., et al. : N. Eng. J. Med., 357(2007) nihpa40967)。

 

腎機能についてはCCr 30mL/min以上が対象とされ、心房細動、脳卒中を含む腎臓、心臓の新たなイベント発症率に差はなかった。CCr30~60mL/minの腎不全患者 においても腎不全の進行は認められなかった。今後期待できる薬剤である。
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)は、従来のエストロゲンとは受容体への結合様式が異なるため、脳血管障害や発癌性を認めない。透析患者に対する使用法について60㎎/dayの投与で骨密度の増加とLDL低下効果を認め、重大な副作用を認めなかったという報告4)があるが、1年以上の長期観察報告はない。腎不全患者においては蓄積性が認められており、添付文書では慎重投与になっている。
その他『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006』で推奨される薬剤に、活性型ビタミンD製剤、ビタミンK製剤、カルシトニン製剤がある。これら3剤は腎不全患者においても減量する必要はない。ビタミンD製剤は 効果的な骨密度上昇に有用であるのみならず、腎不全患者の骨ミネラル代謝異常(chronic kidney disease-mineral and bone disorder : CKD-MBD)治療において腎性副甲状腺機能亢進症との関連も含め広く使われている。

 

ただし、保存期腎不全患者においては腸管からのCa吸収亢進による 高Ca血症に脱水が加わると悪循環に陥り腎不全の急性増悪をきたす。少量投与からはじめ血清Ca濃度をフォローする必要がある。ビタミンK製剤は閉経後やステロイド骨粗鬆症での有効性が証明されている。さらに、異所性石灰化との関連が報告されており、血管石灰化抑制効果も期待される。カルシトニン製剤は腎不全患者での骨塩量増加における効果は不明であるが安全性は高い。
腎不全患者では慢性的な代謝性アシドーシスが骨吸収を促進する。骨量減少抑制の意味からも補正に努める。

 

出典:名古屋大学