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腎臓と食事

糖尿病の患者さんにとって、血糖コントロールを良好に維持するために食事療法が重要であることは、いうまでもありません。ただし糖尿病の合併症のひとつである腎症を併発し、腎機能が低下してしまった場合は、腎機能に配慮しなければならず、食事療法の内容も変わってきます。
腎 症合併以前とは異なる食事療法となるため、不安や疑問を感じる方も多いことでしょう。今回は、糖尿病性腎症を合併した場合の食事に焦点を当ててみたいと思 います。腎臓の機能を長く維持するために必要な食事療法について、東京女子医科大学糖尿病センターの馬場園哲也先生に伺います。

糖尿病と腎症について

腎臓には、細い血管が集まった糸球体が約100万個あります。糸球体は、血液中の必要な蛋白質や赤血球、白 血球を保ちながら、同時に水やミネラル、老廃物をろ過して尿として排出する、ふるい(フィルター)の役目をしています(図)。高血糖が続くと、糸球体の細 い血管は硬く、狭くなって、ろ過機能が低下してきます。そのため、老廃物がろ過できずに身体に溜まります。これが腎症です。腎臓の病気は自覚症状が出るの が遅いため、検査によって早く気づくこと(早期発見)が必要です。
糖尿病性腎症は放っておくと、早期腎症、顕性腎症、腎不全、そして透析へと進みます。

図 糖尿病と腎症について

早期腎症期

糸球体のろ過機能に変化が生じ、まずアルブミンという血液中の蛋白が尿に少量出るようになります。この時期に自覚症状はありませんが、血圧が上がる傾向にあります。

顕性腎症期

持続的に蛋白尿が陽性となります。この時期は、急速に腎機能が悪化し、むくみなどの症状がみられることもあります。

腎不全期

糸球体での血液ろ過機能が著しく低下します。血液中に老廃物が溜まり、身体中の細胞の働きが悪くなります。尿毒症(だるい、貧血)、尿毒症性神経痛(夜中に手足が痛い、かゆい)、ネフローゼ症候群(慢性的なむくみ、尿蛋白3.5g以上)がみられます。

糖尿病性腎症と食事療法

早期腎症期以降には、腎機能に無理な負担をかけない食事療法が大切になります。腎症の所見がみられた時点 で、血糖コントロールを基本に、食塩、蛋白制限を中心とした、腎臓に負担をかけない食事に切り換えていきます(表1)。この食事療法が腎症を進行させない 有効な方法です。
早期腎症期では、きちんとした血糖コントロールをしながら、食塩の過剰摂取はひかえてください。
顕性腎症期に入ると、進行を少しでも遅らせるよう努力します。厳格な血糖コントロールを継続しながら食塩、蛋白質を抑えた食事にします。
腎不全期では腎症治療に重点をおいた食事療法となります。厳格な血糖コントロールの上、蛋白質、食塩を厳しく制限します。この結果、不足するエネルギー量を、炭水化物や脂質で補います。

表1 糖尿病腎症生活指導基準

病期 ろ過機能
尿蛋白
蛋白質
g/kg体重/日
食塩
g/日
カリウム
g/日
血糖コントロール
総エネルギー
kcal/kg/日
腎症前期予防 正常-高値 陰性 過剰摂取はさける 制限せず過剰はさける 制限せず 糖尿病食を基本とし
血糖コントロールに努める
25-30
早期腎症期
進行抑える
正常-高値
微量アルブミン尿
1.0-1.2
過剰摂取はさける
制限せず過剰はさける 制限せず 厳格なコントロール
25-30
顕性腎症(前期)
抑えるあるいは進行を遅らせる
60mL/分以上
蛋白尿1g/日未満
0.8-1.0
蛋白制限食
7-8 制限せず 厳格なコントロール
25-30
顕性腎症(後期)
進行を遅らせる
60mL/分未満
蛋白尿1g/日以上
0.8-1.0
蛋白制限食
7-8 軽度制限 コントロール
30-35
腎不全期
腎不全食
高窒素血症
蛋白尿
0.6-0.8
低蛋白食
5-7 1.5 コントロール
30-35

社団法人 日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド2006-2007 文光堂 2006 68-69頁より改変

摂るべき食品、控える食品

蛋白質

蛋白質は消化・代謝され、最終的に尿素などの老廃物が糸球体でろ過されます。蛋白質を多く摂ると、機能が低 下している腎臓に負担がかかり、腎症の進行を早めてしまいます。腎症の方は、蛋白質を控え、腎臓の機能を少しでも長く保てるようにします。肉などの動物性 蛋白質は腎臓の血流を増やして負担がかかるので、大豆など植物性蛋白質がよいでしょう。食品からしか摂れない必須アミノ酸の不足にも注意しましょう。

食塩

腎臓での塩分の排泄が低下するため、血液中の塩分濃度が高くなります。これは高血圧の原因になります。ま た、高血圧は腎症を悪化させます。高血圧を合併している場合には、食塩摂取量は1日6g未満が推奨されています。香辛料やレモン、だしなどを上手く使い、 塩分を控えましょう。

カリウム

カリウムは腎臓から排泄されるため、腎機能が低下すると、血液中のカリウム濃度が高くなります。カリウムは 細胞を活性化する働きをもっていますが、多くなると心臓がどきどきしたり(頻脈)、心機能が低下したりします。野菜や果物に多く含まれるカリウムは水に溶 けるので、野菜の煮物では煮汁を捨てる工夫も必要です(表2)。

表2 100g中に含まれるカリウム量(mg)

1000mg以上 切干だいこん (3200)
乾しいたけ (2100)
あんず(乾) (1300)
500mg以上1000mg以下 うるめいわし (820)
アーモンド (770)
アボガド (720)
干し柿 (670)
納豆 (660)
カシューナッツ (590)
だいず(ゆで) (570)
さといも(水煮) (560)
甘ぐり (560)
さつまいも(焼き) (540)
300mg以上500mg以下 さわら (610)
ほうれんそう(ゆで) (490)
まあじ(焼き) (490)
かぼちゃ(ゆで) (480)
たけのこ(ゆで) (470)
丸干しいわし (470)
ぶなしめじ(ゆで) (340)
じゃがいも(水煮) (340)
300mg以下 おくら(ゆで) (280)
にんじん(ゆで) (260)
さくらんぼ (260)

山下光雄 編 日本食品成分表(第2版)100kcal/100g
五訂増補日本食品標準成分表 準拠 建帛社 2005 より抜粋

水分

体内の水分量が増加するとむくみが出てきます。飲料だけでなくスープ、ラーメンの汁などから摂る水分についても考慮してください。

エネルギー量

糖尿病食を摂りつつ、更に蛋白質を控えると、総エネルギー量が少なくなります。また、炭水化物や脂肪が足りないと蛋白質の摂取でエネルギーを補給してしまいがちです。
蛋 白質は血液の成分や筋肉の材料となる重要な栄養素ですので、総エネルギー量を維持するためには、蛋白質で減少した分を油脂・炭水化物などで補う必要があり ます。この点が、腎症合併以前の糖尿病の食事療法と大きくかわる点です。炭水化物摂取量が増えたため血糖値が上昇する場合には、インスリンを使って正常化 をはかります。

理想とする食事

腎臓の状態から、まず1日のエネルギー量、蛋白質量を決めます。医師、専門の栄養士さんの指導を受け、「糖尿病性腎症の食品交換表」を用いて献立を考えてみてください。わかりにくいことや、疑問に思ったことを相談しながら進めていくのがよいでしょう。
最近は、蛋白質を減らした低蛋白ごはんやパン、めんなど治療用補助食品、果物の缶詰、ジャムなどのエネルギー調整食品もあります。このような食品を上手に利用し、献立におかずを増やすことができます。
食事療法は「食べてはいけない」のではなくて「食べる量を注意する」ことです。好きなものをメニューに組み込み、食事を楽しむこと、患者さん自身の工夫と家族の協力が継続のコツといえるでしょう。

出典:DM TOWN